ダイヤモンドより平和がほしい—子ども兵士・ムリアの告白
後藤健二著 汐文社 2005年 シエラレオネ 小学校高学年から

西アフリカのシエラレオネは、ダイヤモンドの産地であることから戦争の舞台となり、平均寿命が世界一短い国としても、子どもの兵士が多く使われたことでも、知られるようになった。ジャーナリストの著者が、シエラレオネの戦傷者キャンプや子ども兵士の保護施設を訪れ、インタビューしてまとめたノンフィクション。目の前で両親を殺されて反政府軍に入れられたムリア少年は、皮膚の下に麻薬を埋め込まれて「殺人マシーン」と化していた。でも今は、心に大きな傷を負いながらも麻薬中毒から脱し、将来は大統領になる夢までもつようになったという。被害者が、「平和のためには子ども兵士を許さなきゃ。でも忘れはしない」と語る声も重い。


学校に行けないはたらく子どもたち1 アフリカ
田沼武能著・写真 汐文社 2004年 小学校中学年から

アフリカ各地で働いている子どもたちをリアルな写真で紹介している。水くみ、洗濯、家畜の世話、農作業、薪割り、食事の準備、子守り、掃除といった家事手伝いだけでなく、一人前の稼ぎ手として工場で働いたり、売り子として魚や野菜やサンダルや衣類などを売る子どもたちも登場する。働くのは悪いことではないけれど、問題は、この子たちが学校へ行けないので、今の暮らしから抜け出す手がかりをつかめないこと。巻末には、アフリカの経済や政治、医療や教育についての解説も載っている。世界に1億2000万人もいるという児童労働者の様子を伝えるシリーズ(他はアジア・オセアニア、中南米、中東・北アフリカ)の1冊目。


学校に行けないはたらく子どもたち4 中東・北アフリカ
田沼武能著・写真 汐文社 2004年 北アフリカ 小学校中学年から

世界に1億2000万人もいるという児童労働者の様子を伝えるシリーズの4巻目。1巻目の「アフリカ」で紹介していない「北アフリカ」の働く子どもたちを取り上げている。写真は中東の子どもたちが主で、エジプトとモロッコのものが数枚あるだけだが、レストランの給仕、観光客用のラクダ使い、伝統工芸の修行などに打ち込む少年たちの姿が印象的にとらえられている。巻末にはこの地域の政治、経済、歴史、文化、教育水準などがわかりやすく解説されており、中東諸国と深い関わりがあり、アラブ文化の影響が強い北アフリカについて基礎的な知識が得られる。



シエラレオネ—5歳まで生きられない子どもたち ★
山本敏晴著・写真 アートン 2003年 シエラレオネ 小学校高学年から

シエラレオネでは5歳になるまでに3人に1人の子どもが死んでいくと言われている。それはなぜか? 著者は国境なき医師団の1員としてシエラレオネに派遣された経験をもち、写真とわかりやすい文章で、子どもたちの置かれた状況や国際協力の方法、実際の活動やその考え方について紹介している。1961年にイギリスから独立した、北海道ほどの大きさしかないこの小さな国では、ダイヤモンドが採れる。それをねらって次々に争いが起こり、医者や看護師も国外へ逃げ出してしまった。内戦で家を失ったり、栄養失調になったり、マラリアにかかったりする子どもたちも多い。生命の重さ、事実を知ることの大切さを伝える本。


世界の半分が飢えるのはなぜ?—ジグレール教授がわが子に語る飢餓の真実
ジャン・ジグレール著 たおかまゆみ訳 合同出版 2003年 中学生から

世界には毎日お腹いっぱい食べられ、食料が有り余る国がある一方で、いつも飢えに苦しむ人々が暮らす国がある。アフリカを中心にアジア、南米などの事例を紹介しながら政治腐敗、経済の支配、戦争、環境破壊などによって起こる飢餓について解説し、世界からなぜ飢えがなくならないのか、どうしたら飢えをなくすことができるのか、という難しい問題に、父(社会学者の著者)と子の対話形式でわかりやすく答えている。なかなか見えにくい世界の本当の姿に「飢え」という切り口から光をあて、すべての人が人間らしく生き、食べることができるような公正な世界の実現を呼びかけている。

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©Hidenori Motai
〜「アフリカ子どもの本プロジェクト」作成 アフリカに関する児童書おすすめリスト〜
このリストは、「アフリカ子どもの本プロジェクト」が作成したものです。日本の子どもたちに、アフリカのことをもっと知ってもらうためにぜひ読んでほしい本を選びました。
●配列の順番 ジャンル別→書名50音順
●2007年8月の時点で入手できない本は除きました。その後品切れになった本は、書名の後に*をつけました。
●作品の舞台や、登場人物に関連のあるアフリカの地名を記入しました。
物語絵本
昔話(昔話絵本、昔話集)
児童文学(小学校低学年〜、小学校中学年〜、小学校高学年〜)
ノンフィクション(歴史・伝記)
ノンフィクション(地理)
ノンフィクション(文化・暮らし)
ノンフィクション(動物)

アパルトヘイト問題
シーン・コノリー著 来住道子訳 文溪堂 2003年 <国際理解に役立つ世界の紛争を考える4> 南アフリカ 小学校高学年から

世界的に問題になっている紛争をわかりやすく解説したシリーズの1冊。1994年に全面廃止された南アフリカの「アパルトヘイト問題」を取り上げ、その歴史的背景や経緯、そして南アフリカのその後の動きなどを写真をまじえて紹介している。文章量が比較的多いが、ポイントとなる部分には印をつけ、要点がまとめてあるので読みやすい。アパルトヘイト問題を理解する最初のステップとしてすすめたい。原著は2000年の刊行なので、その後の情報は更新されていないため、21世紀になってからの南アフリカの状況には触れられていない。索引あり。


アフリカのいまを知ろう
山田肖子編著 2008年 <岩波ジュニア新書> 中学生から

いろいろな形でアフリカに関わっている日本人研究者11人へのインタビュー集。アフリカの歴史と現況、問題点などを第1章で概観したあと、第2章では各人の研究分野に応じて、アフリカ経済史から農学、国際協力、援助、言語文化、文化人類学、アフリカでの手話、医療、音楽など、幅広い分野の話題をとりあげる。テーマは各項目ごとに完結しているので、目次を見て興味を持つ箇所が見つかれば、どこからでも読み始められる。対話形式で語られ、理解を助ける写真も添えられているので、読みやすい。巻末には、さらに深く知るための資料リストと、この本の基となったインタビューの全文を掲載したウエブサイトの紹介もついている。


中東/北アフリカの紛争
岩崎書店 2004年 <いつ・どこで・何がおきたか?国際紛争の本> 北アフリカ 小学校高学年から

第二次世界大戦後から今日までの国と国との戦争や紛争、内戦等の背景について解説した本。アフリカ関連で取り上げられているのは、スーダン内戦、アルジェリア紛争、西サハラ紛争。それぞれについて、いつ、どこで、何が起こったのか、どんな背景があるのか、これからの展望はどうかを、写真とイラストを入れて見やすくしながら、説明している。最初の2つの紛争に関係するイスラム教については、別だてのコラムがあり、中東との文化的関連がよくわかる。現在進行中の紛争も取り上げられているため、定期的な改訂が望まれる。


中部・南部アフリカの紛争
岩崎書店 2004年 <いつ・どこで・何がおきたか?国際紛争の本4> 中部・南部アフリカ 小学校高学年から

「人種・民族・宗教をめぐる紛争」としてコンゴ内戦、ルワンダ内戦、ソマリア内戦、リベリア内戦、モザンビーク内戦が、「領土・国境・資源をめぐる紛争」としてシエラレオネ内戦とアンゴラ内戦が、「分離・独立をめぐる紛争」としてエチオピア内戦とエチオピア・エリトリア紛争が、「植民地独立をめぐる紛争」としてコンゴ動乱が取り上げられ、それ以外に国際法廷、アパルトヘイト、戦争とビジネス、子ども兵士のことがコラムとして説明されている。アフリカの内戦は新聞やテレビなどでよく報道されるが、子どもがそれについて自分で調べようとしてもほとんど資料がない。本書はそのようなときに事実を知るのに役立つ本としてすすめたい。

No Image
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アフリカ 子どもたちの日々 田沼武能写真集
田沼武能著 ネット武蔵野 2008年 小学校低学年から

世界中の子どもたちの撮影を生涯のテーマとして活動している著者が、アフリカの子どもの日常を撮った写真集。満面の笑顔で遊び、真剣に勉強し、得意げに家事を手伝う子どもたちの、生き生きとした表情が印象的。ページをめくると、アフリカの子どもたちにも、世界のどことも変わらない日常があるという当然のことに気づかされる。同時に、飢えや病気、内戦に苦しむ子どもたちの姿も目に飛びこんでくる。全ページモノクロだが、写真から伝わってくる力は、色彩をおびないことで逆に物語性を増し、読者の心に染みこむように響く。アフリカの希望と現実の狭間に生きる子どもたちの姿を伝えてくれる1冊。



飢餓—くりかえされる苦しみからの脱出
国連世界食糧計画著 ポプラ社 2003年 <21世紀の平和を考えるシリーズ4> 小学校高学年から

飢餓はなぜ起こるのか? その原因と人々に及ぼす影響をわかりやすく解説した本。アフリカやアジアで飢餓に苦しむ人々の暮らしを紹介し、自然災害、人口増加、人口の都市集中、輸出作物と食料農産物のアンバランス、内戦・紛争などの原因に触れ、世界的な視点から飢餓を防ぐにはどうしたらいいかを考えさせる。各項目の要旨を小見出しにしたり、「もっと知りたい」マークをつけるなど、調べ学習の便宜をはかっている。カラー写真、イラストを使った見やすいレイアウト。シリーズを通して世界の人々の人権と子どもたちの人権について学び、読者が同じ地球の仲間として何ができるかを紹介する。分布図やグラフなどの数字は定期的な改訂が必要。索引あり。


子ども兵士 銃をもたされる子どもたち
アムネスティ・インターナショナル日本編著 リブリオ出版 2008年 <世界の子どもたちは今1> コンゴ民主共和国、ウガンダ 中学生から

現在世界には、強制的に武力紛争に参加させられる子ども兵士が少なくとも30万人いるといわれ、その数はアフリカ地域に最も多い。アフリカ中部で取材を続けるフォトジャーナリスト下村靖樹氏の報告に始まり、主にコンゴ民主共和国とウガンダの実例を紹介しながら、世界の子ども兵士の実情とその背景、さらに今後の各国の取り組みについて解説する。子ども兵士の表情をとらえた写真や、子ども自身の言葉で語る証言の数々が紹介され、文章も読みやすい。同じシリーズに『児童労働 働かされる子どもたち』『子どもの人身売買 売られる子どもたち』があり、アフリカの例も一部紹介されているので、関心のある人はあわせて読んでほしい。

未来を信じて—南アフリカの声
ティム・マッキー著 アン・ブラックショー写真 千葉茂樹訳 小峰書店 2002年 <ノンフィクションBooks> 南アフリカ 中学生から

アパルトヘイト体制崩壊後の南アフリカに生きるティーンエイジャー12名の声を集めたインタビュー集。人権を奪われてきた黒人、差別する側にいた白人、やはり差別されてきたカラード、それ以外の人種など、様々な民族的、社会的、経済的背景を持つ人々が、アパルトヘイト下で経験したことや現在もっている希望などを生の声で語る。各インタビューの冒頭には、人物紹介を兼ねた簡潔な社会背景の説明があり、理解を深められる。声の主である若者の写真も数枚ずつ添えてあるので親しみがもて、実情を訴える声がいっそう生々しく伝わる。原書は1999年刊だが、巻末解説では現在南アフリカが抱えるエイズ問題にも触れている。同世代の読者に手渡したい。



ルワンダの祈り 内戦を生きのびた家族の物語
後藤健二著 汐文社 2008年 ルワンダ 小学校高学年から

大虐殺(ジェノサイド)後10年以上が経ち、立ち直りつつあるルワンダを取材したドキュメンタリー。著者は外国人という立場をわきまえた上で、現地の人々の悲しみや怒りを共有してインタビューを進める。大虐殺を生きのび、現在は国会議員として国の再生に力を発揮している1女性の話が中心となる。民兵から身を隠して逃げたこと。途中ではぐれた我が子を、何か月もかかって見つけ出したこと。夫と長男が隣人に殺された恨みと悲しみは消えることはないが、それでも「生き残ったわたしたちの責任は、幸せに暮らすこと」と語る。大虐殺後の家族の暮らしを描きながら、大虐殺そのものについて知るきっかけともなる作品。取材時の写真も掲載されている。

エイズ—とめよう世界に広がる病
高橋央ほか著 ポプラ社 2003年 <21世紀の平和を考えるシリーズ5> 小学校高学年から

エイズに関する基礎的な知識をわかりやすく解説した本。エイズ孤児になったザンビアの少女を紹介し、エイズとはどんな病気か、HIVはどのように感染するかを解説するほか、世界の感染者数、アフリカにエイズが多い理由、若い人に多い理由、感染を減らす方法、HIV検査、エイズが及ぼす影響などにも触れる。各項目の要旨を小見出しにしたり、「もっと知りたい」マークをつけるなど、調べ学習の便宜をはかっている。カラー写真、イラストを使った見やすいレイアウト。内容はごく基本的な知識にとどまるので、第1段階の参考書として位置づけられる。分布図やグラフもあるが、数字は常に新しくなるので定期的な改訂が望まれる。索引あり。



HIV/エイズとともに生きる子どもたち ケニア あなたのたいせつなものはなんですか?
山本敏晴著・写真 小学館 2009年 ケニア 小学校高学年から

医師であり、世界の国々で取材を続ける著者が、ケニアでHIVに感染する子どもや大人に「あなたのたいせつなものはなんですか?」とたずね、その答えをポートレートとともにまとめた写真絵本。「くすり」「この国、ケニア」「病院」「医師になること」「教会」「家」「川」「マタトゥ」「生活」……という答えの後に、HIVという病気、現在ケニアではどういう活動がすすめられているかなど、ケニアの国やHIV対策の現状を綴った文章が続く。巻末には世界と日本のHIVの現状、私たちはどういう活動をしていけばいいのか、専門家は今なにをしているのか、というまとめもついている。ケニアを取材対象としているが、途上国での状況へと敷衍していく視点もあり、英文が併記され、広く手に取ってもらえるよう工夫されている。


戦争が終わっても—ぼくの出会ったリベリアの子どもたち
高橋邦典著・写真 ポプラ社 2005年 リベリア 小学校高学年から

リベリア共和国では政府軍と反政府軍との戦闘が14年間断続的に続いたが、2003年8月に大統領が辞任し、内戦は終わった。報道写真家の著者が、内戦中に取材で出会った子どもたちの安否を確かめるために再びリベリアを訪れ、現地の実情を写真と文章で伝えた本。少年兵として前線で殺戮に加わったモモとファヤ、反政府軍の砲弾で家族のすべてを殺された少女ギフト、爆撃で右腕を失った少女ムス。戦争が終わった今、彼らはろくな食事にもありつけず、学校にも行けない。消し去ることのできない戦闘の記憶を抱えながら、彼らの目は何を見ているのか。平和な日本の読者には衝撃的な写真もあるが、同じ時間を生きる彼らの真実から目をそらさないでほしい。